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外反母趾とは

 

外反母趾は足の親ゆびが外側に曲がってしまう病気で、外反母趾になりやすい人、また外反母趾気味の人が対策をしないで放おっておくと隣の人差し指まで曲がってしまいます。そうなると、足でしっかりと地面と捉えることができなくなり、膝・股関節痛や転倒などを引き起こし「歩く」ということが大変になってしまいます。
最初のうちは、たくさん歩くと親ゆびの付け根が痛いという症状のみなので、自分が外反母趾だとは思わないかもしれません。しかしそこでは小さな関節炎が起きています。我慢できない痛みではないのですが、これを毎回繰り返すことで徐々に関節が壊れていき、ついには脱臼して一気に症状が進行してしまいます。
関節が脱臼すると親ゆびの痛みはなくなりますが、足の形や歩き方が大きく変わってしまい、知らないうちに足全体が壊れていきます。(表1)
 

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    表1 外反母趾の進行と症状

原因は何?

 

外反母趾という病気なので母趾、つまり親ゆびに原因があると思われがちですが、親ゆびが原因で曲がってしまうわけではありません。
そもそも足は生まれながらにして骨格構造が強い方と弱い方がいます。ここでいう骨格構造とは骨と骨を繋ぐ靭帯組織や関節構造などのことで、”骨格構造が弱い”というのは、いわゆる「ぐにゃぐにゃ足」を指します。そして構造が弱いと、体重に関係なく立つだけで足が潰れてしまい本来の形を保つことができなくなってしまいます。(表2)
骨格構造が強い方はどんな靴を履いても、どれだけ負担をかけても外反母趾になることはありません。一方で骨格構造が弱い方は、一定の“条件”を満たせば外反母趾になってしまいます。
人の足の形は顔のようにかなりの個体差があり、外反母趾になりやすい“条件”とは、親ゆびへの負担がかかりやすい足そのものの形のことをいいます。 例えば、骨格構造がどんなに弱くても、もともとの形が良ければ外反母趾にはなり得ません。一方で骨格構造が弱く足の形が悪い方は、どれだけ気をつけても外反母趾になってしまいます。骨格構造が強くても足の形が悪い方は、親ゆびへの荷重が集中するため、変形は少ないわりに痛みが強くなります。このとき構造が弱ければ、外反母趾となり脱臼し得るのですが、強いために脱臼することができずに痛い状態が続き、いずれ強剛母趾という違う病気になってしまいます。(表3)
また、手足の骨格構造と形は、両親の混合で遺伝するというわけではなく近親者の誰かをそのまま引き継ぐ傾向にあります。家系的に外反母趾が多いということが見受けられますが、外反母趾が遺伝するのではなく、そうなってしまう足の骨格構造と形が遺伝していると言えます。
 

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    表2 足の機能と形状

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    表3 痛みと変形の原因

治療の種類

 

外反母趾は親ゆびの病気ではないため、引っ張ったり、何かを挟んだりして治ることはあり得ません。大事なことは足の骨格構造と個々の形を見極め、痛み度合いや変形度合い、生活スタイルなどから治療効果をどこに定めるかということになります。
適切な靴の使用や選び方を知るだけで良くなることもありますし、歩き方の改善や日々のストレッチが必要な方もいます。
変形や痛みが強い方は、それぞれの骨格構造と形に合わせた治療用インソール(靴の中敷き)を作成し使用することで、進行を抑制し痛みを緩和させることができます。但し、インソールは足に残っている機能を最大限に引き出すもので、機能はある程度改善しますが、変形したゆびが治ることはありません。
変形したゆびを治すには手術による矯正が唯一の根本治療となります。  

外反母趾の手術

 

外反母趾を一つのタイヤだけが違う方向を向いた整備不良の車に例えてみます。この車が前に進むとき、最初はその部分の回転軸が少しずれているだけなので何とか動きますが、次第にそのタイヤへの負荷は大きくなり、どんどん違う方向へタイヤが向いてしまいます。そうなるともはや前には進めず、最終的に外れてしまって車本体が動かなくなってしまいます。たとえ外れたタイヤをそのまま元に戻しても動き出せば再度外れてしまうことも容易に想像ができると思います。
外反母趾の手術は、外れたタイヤを車に戻すことはもちろん、もともと歪んでいた回転軸を正常なところまで修正することに大きなポイントがあります。軸をしっかり整えておくことで術後再発の心配は減り、正しい踏み返し歩行が可能となります。また、正しく歩けるようになることで、親ゆびの横や、人差しゆびの付け根の裏にできている胼胝(タコ)なども無くなります。
足のクリニックの手術は3泊4日程度の入院で行なっていますが、クリニックに入院設備はありませんので、提携病院でクリニックの医師が執刀します。術後の通院(診察やリハビリ)は当クリニックで行っております。  

足のクリニックが行う手術法の詳細 (吸収性素材の使用)

骨きり矯正

図1 骨きり矯正術

 

足のクリニックの医師が行う外反母趾の手術は、通常は入院の上、全身麻酔で行います。(図1)
傷あとが目立ちにくい親ゆびの付け根の横側を4〜5cm程度切開し、そこから親ゆびではなく、中足骨という関節の手前の部分の骨を特殊な道具で分断し、関節の軸が整う場所に移動させたうえで吸収性もしくは金属製のスクリューを使って固定します。(図2)
骨は一平面上で分断すると固定したとき不安定になってしまうので、Chevron(シェブロン)骨切りという、三次元的な形に分断する方法を行なっています。(図3)
※吸収性のスクリュー:チタン性ではなく、後から抜く必要がない生体に吸収される素材(ポリ-L-乳酸/ハイドロキシアパタイト)のスクリューを使用します。
※足の変形度合いや執刀医の判断によっては、チタン合金製スクリューを使用する場合もございます。

 

手術時間は片足40〜50分程度で、両足同時に手術を行なっても前述のように骨は強固に固定されていますので、翌日からの歩行が可能です。また、医療用の特殊な靴などは必要なく、少し大きめの靴を履けば術後1週間程度で職場復帰(デスクワークから)が可能です。
抜糸までには2週間程度を要しますが、その間シャワー浴は可能で傷口は濡れても構いません。
3ヶ月程度は腫れぼったい感じがありますが、3ヶ月経つと骨が完全に治りますので、腫れは引き、その後はランニングなどの激しい運動も可能となります。
手術から半年経過すると、違和感がなくなり足が安定しますので、トラブルがなければ通院の必要はなくなります。
 

  • 図2 吸収性スクリューによる固定

    図2 吸収性スクリューによる固定

  • 図3 余剰部位を除去

    図3 余剰部位を除去

まとめ

 

外反母趾手術の術式は多岐に渡りますが、足のクリニックでは、このように生体吸収性のネジ(ポリ-L-乳酸/ハイドロキシアパタイト性)を使用したChevron法の手術を推奨しています。
生体吸収性素材は金属に比べ、アレルギー反応を起こしにくく、次第に骨へ吸収されます。
また、手術後に金属が骨を刺激することもなく、ネジを取り出す再手術も必要ありません。
足の機能、母趾の機能を改善することはもちろんのこと、見た目も美しく、快適な歩行を可能とするために、形成外科的考えも取り入れたこのような手術方法を提案しております。
 

  • 術前

    手術前レントゲン

  • 術後

    手術後レントゲン