case
reportVHO(3TO)ワイヤーを用いた巻き爪矯正術
爪と皮膚の診療所 山口 健一
適応
- 疼痛のある巻き爪
VHOワイヤーの利点
- 短い爪でも装着できる
- 矯正力は非常に強力
- 基部にかけることが出来るので新生爪に働きかける
- 長期間外れないので再診までの期間が長い
- 邪魔にならない
- スポーツ、プール、入浴などに制限がない
はじめに
爪のトラブルで悩んでいる方はとても多いのですが、診療科によっては治療方針が大きく異る傾向があります。「当院では切らずに治します」と掲げるクリニックやフットケアサロンもあれば、巻き爪を診るや否や承諾書も作成せずに趾先から麻酔をかけて全抜爪をするような施設もしばしば耳にします。
爪だけが原因で爪が巻くわけではないのですが、その原因を追求をする医療機関はほとんどありません。
外反母趾の方は程度の差はあれ、ほぼ皆さん巻き爪ですし、扁平足(足の回内)というだけで巻き爪になる方もいます。強剛母趾になると末節骨が変形してきてしまい、かなり重症な巻き爪になってしまう傾向にあります。
つまり巻き爪の発症要因は足の形状と機能に依存しますので、その背景を考えながら治療方針を決定していく必要があります。
今回、VHO(3TO)ワイヤーを用いた巻き爪矯正術について後述しますが、これのみで治癒しない方に対しては原因を検討する必要があるでしょう。
従来ワイヤーの欠点とVHOワイヤーの利点
従来のワイヤーによる矯正では爪を伸ばしていないと矯正ができず、伸ばした爪が割れたり靴にあたってしまうという欠点がありました。趾の変形を伴うものであればワイヤーの先端が2趾にあたって痛むこともあります。
また、もっとも危惧されていたことは爪の先端に装着するため根本に対する矯正力が非常に弱いことで、これらを踏まえてVHOワイヤーが開発されました。
VHOワイヤーの矯正力は非常に強力で、短い爪でも装着が可能であり、フックを爪の基部にかけることで新生爪にも働きかけることができます。
爪の伸びる早さにもよりますが、基部へ矯正をかけているため、付け替えまでの期間は従来のワイヤーと比べ圧倒的に長くなります。
施術方法
・ワイヤーの作成
爪の形状に合わせて図の如くワイヤーを作成し、巻き上げ用フックも含め3点準備します。
・ワイヤーの挿入
趾先端からワイヤーのフック部分を爪の脇に沿わせるように挿入して、フックをかけた状態で90度回転させて爪に引っ掛けます。
・ワイヤーの巻き上げ
両サイドの爪にフックをかけたら、ワイヤーの反対側に巻き上げ用のフックをかけ、専用器具で巻き上げます。これにより爪が矯正された状態で維持されます。
・仕上げ
余剰したワイヤーをカットし、人工爪を結び目にのせて固定します。装着直後から入浴やプールが可能ですので日常生活に支障はありません。
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施術前
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施術後
付け替え時期
特に問題がなければ、1ヶ月半から2ヶ月後に確認を行います。このとき、爪を短くカットすることで矯正力は更にあがります。
後療法と再発予防
巻き爪の矯正は再発しやすいと言われていますが、それは原因の解決ができていないからです。また、巻き爪は遺伝すると言われている先生方もおられますが、原因となる足の形状と機能が遺伝しているためと考えられます。
即ち、再発予防のためには爪が巻いている原因を解決した上で、正しい靴や自身に適合した靴の中敷き(インソール)を使用することが大切になってきます。
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矯正前
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VHOにて矯正後 4ヶ月
施術のポイント
- 個々の爪の形状に合わせたワイヤーを作成することで、最大限の矯正力を引き出し、無理なく良好な形態に導きます。
- 爪の硬さを考慮し、必要に応じて爪を薄く処理してから装着することで、従来法では困難だった爪に対しても容易に矯正を行うことが可能です。
- 巻き上げた部位を人工爪でカバーすることにより、違和感の無い自然な形に仕上がります。