フットエイジング
〜足も老化する〜
第6回/全20回
社会に出てから始まる「見えない足の変化」
前回は、乳幼児期から思春期にかけての足の成長や構造的な変化、すなわち「フットエイジング(Foot Aging)」についてお伝えしました。普段あまり注目されることのない「足の加齢変化」にも、実はライフステージごとに明確な変化があり、それが将来的なトラブルの“種”となっていることをご理解いただけたかと思います。
今回はその続編として、成人以降のフットエイジングについて解説していきます。特に社会人、出産・育児期、中高年、そして老年期に至るまでの「足の機能の変化」と、それにまつわるさまざまな問題について、段階的に見ていきましょう。
● 社会人になった途端に“足”が壊れ始める?
社会人になると、足を取り巻く環境は一変します。まず多くの人が、入社と同時に履き慣れない革靴やパンプスを履くようになりますが、これが足にとっては大きな負担となります。とくに立ち仕事の場合、硬い床の上に長時間立ち続けることで、足裏やふくらはぎ、足首へのストレスは想像以上に蓄積されていきます。
また、職場によっては「足が痛い」「靴が合わない」といった相談がしづらく、我慢を続けてしまう方も少なくありません。その結果、足の活動限界値(=その人が痛みなく耐えられる負荷の上限)を越えてしまい、トラブルが急速に進行してしまうケースが多発します。
さらに、学生時代は通学や部活動で自然と運動していた方も、社会に出てからは運動量が激減する傾向があります。これにより、足を支える筋肉や柔軟性が失われ、「足の耐性=閾値」そのものが下がってしまうのです。そこに日々の負荷が加わると、足は次第に“壊れやすい構造”へと変わっていきます。足が痛むのは、単に「疲れ」ではなく、耐性を超えたSOSサインであることを忘れてはなりません。
● 妊娠・出産期は、知られざる足の分岐点
女性の場合、妊娠・出産という大きなライフイベントを機に、足のトラブルが表面化することが少なくありません。これは、妊娠中に分泌されるホルモン「リラキシン」が、出産時に産道を広げるために骨盤周囲の靭帯をゆるめる働きを持つ一方で、足の靭帯や腱、関節にも影響を与えてしまうためです。
しかし実際には、出産後に骨盤は矯正ベルトなどで整える方が多くても、足に対してはケアの優先順位が下がってしまうことがほとんどです。加えて、育児で多忙な日々が続く中では、足の不調に気づいても受診のタイミングを逃してしまいがちです。
そして子どもが成長し、ようやく時間に余裕ができたと思った矢先、今度は親の介護が始まり、自身の足をいたわる時間がさらに遠のいてしまう。結果として、60歳を過ぎてようやく「足の不調に向き合う時間ができた」という方が本当に多いのが現実です。
● フットエイジングの“曲がり角”は40代から
臨床の現場で実感するのは、足の老化=フットエイジングが本格的に始まるのは40代以降ということです。とくに40〜50歳代は、クリニックへの受診数が最も多い年代です。
この年代になると、筋力・骨密度・柔軟性といった身体機能の低下が少しずつ始まります。それに伴い、アーチ構造の崩れや足趾の変形、巻き爪、外反母趾などの構造的トラブルも現れやすくなります。
しかしながら、これらの変化は痛みの出現と改善を繰り返しながら進行するため、自覚しづらいという特徴があります。まるで“少しずつ傾いていく建物”のように、日常生活の中では気づかれにくく、ある日突然「もう戻れない地点」に達してしまうこともあるのです。
また興味深いのは、同年代の受診者の男女比を見ると、女性は男性の約3倍にもなります。これは、靴の影響や妊娠・出産による構造的変化に加えて、「自分の体に敏感に気づき、対処しようとする意識の高さ」が影響していると考えられます。
● 老年期では「歩けるかどうか」が“健康寿命”を左右する
老年期に入ると、足の健康は生活の質そのものに直結します。歩けるか、歩けないか、この違いが健康寿命に大きな影響を与えます。
足関節や股関節の柔軟性が低下し、体幹筋が衰えると、転倒のリスクが一気に高まります。しかも、すでに変形や痛みを抱えている足で「とにかく歩かないと」と無理をすると、かえって症状が悪化し、歩行能力が低下してしまうことも。
つまり、「歩く=健康によい」は一概に言えず、自分の足の現状を理解し、適切にケアしながら歩くことが重要なのです。
とはいえ、自分自身で足の状態を客観的に評価するのは容易ではありません。どこからが正常で、どこからが問題なのか。どんな靴やインソールが適しているのか。日常の歩き方や立ち方に問題はないか、、、こうした点を把握するには、正しい視点と知識が必要です。




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