フットエイジング
〜足も老化する〜
第9回/全20回
外反母趾は親指のトラブルではありません
〜 親指ではなく、足の構造を診るという考え方 〜
年齢を重ねると、ふとした瞬間に自分の身体の変化に気づくことがあります。
鏡に映る顔、健康診断の数値、そして意外と見落とされがちなのが「足」です。
とくに女性では、子育てがひと段落した頃に、
「昔より親指が曲がってきた気がする」
「若い頃に履けていた靴が入らない」
と感じることが少なくありません。
外反母趾は、女性の5人に1人が抱えるとも言われる非常に身近なトラブルです。
その一方で、多くの方がこのトラブルを少し誤解しています。
外反母趾という名前から、「親指が悪い」と思われがちですが、実はそうではありません。
本当に起きているのは、親指の問題ではなく、足のアーチ構造の崩れです。
親指の付け根にある骨が内側へ張り出し、その結果として親指が外へ押しやられて見えているだけ。
つまり、曲がっている親指は“原因”ではなく“結果”なのです。
では、なぜそのようなことが起きるのでしょうか。
最大の要因は、実は靴ではありません。
多くの場合、生まれ持った骨格や関節の性質が大きく関わっています。
診察をしていると、
「母も祖母も外反母趾でした」
という話をよく耳にします。
外反母趾には、はっきりと遺伝的傾向があるのです。
もちろん、靴や生活習慣が進行を早めることはあります。
しかし、それはあくまで“後押し”にすぎません。
もともとの骨格が外反母趾になりやすい人は、どれだけ気をつけてもある程度進行しますし、
逆にその素因がなければ、多少無理をしても大きな変形にはなりません。
「外反母趾になると将来歩けなくなるのでは」と心配される方もいますが、
実際には、外反母趾そのものが直接の原因で歩けなくなることはそれほど多くありません。
80歳を過ぎても外反母趾を抱えながら元気に旅行を楽しみ、
スポーツを続けている方もたくさんいらっしゃいます。
足に弱点があっても、それを補えるだけの筋力や柔軟性が全身にあれば、
人は十分に歩き続けることができます。
だからこそ、外反母趾を考えるうえで本当に大切なのは、
親指だけを見ることではありません。
足首、股関節、体幹、臀部――
身体全体をどう使えているか。
そこまで含めて初めて、「外反母趾を診る」と言えるのです。
次回は、こうした考え方を踏まえて、
私が日常診療で行っている外反母趾の根本治療についてお話ししたいと思います。




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